いじめ・体罰問題について

2013年11月19日 火曜日

学校事件・事故被害者全国弁護団

学校でのいじめ、体罰などで生徒、児童が被害を受けた場合、その被害を速やかに回復するため、迅速に訴訟などの法的対応をメインに行うことを目的とする弁護士の全国横断的な組織ができました。
この組織は、以前から学校でのいじめ等による被害者の被害回復に取り組んでいたベテランの弁護士が発起人の中心となって結成されたもので、現在、その目的に共鳴する弁護士が、北は北海道から南は鹿児島まで、約60人近くが参加を表明しており、もちろん私もその弁護団の一員になっていることは言うまでもありません。
会の理想は日本全国全ての都道府県に最低1名のいじめ問題対応弁護士を配置し、日本全国どの地域からの相談に対しても対応ができることですが、現時点ではまだそのような弁護士がいない地域もあり、弁護団の事務局はそのような地域の弁護士会に強く働きかけを行って、弁護士を推薦してもらい、できるだけ早く全ての都道府県に弁護士を配置するようにしたいとのことです。
その組織の創立総会、引き続いての懇親会が11月17日(日)の午後から東京・お茶の水にある中央大学駿河台記念館(創立総会)、近くのホテル(懇親会)で開催されました。
当方は、創立総会、懇親会の両方に出させて頂きました。
創立総会は弁護士約30名、一般参加者56名の合計86名が参加し、会の規約、活動方針を確認し、役員を選任したあとで、全国学校事故・事件を語る会の代表である内海氏の講演がありました。
平成6年、当時小学校6年生だった内海氏の息子さんは、担任教師の行き過ぎた体罰で自殺しました。
講演では息子さんが自殺してから学校、教育委員会はどう対応し、その対応で内海氏がどのような思いを抱いたかということから始まり、最終的には弁護士に依頼して全面勝訴判決を勝ち取るまでの経緯が淡々と語られました。
内海氏自身も学校で教職にあり、学校と教育委員会が、事実の隠蔽と訴訟を起こされた場合の対策を極めて早い時点から行うことを知り、大きな衝撃を受けたとのことでした。
子供が自殺した場合、遺族はまず大変なショックを受け、少し時間が経つと、なぜ我が子が自殺に追い込まれなければならなかったのか、そのことで自分を責め続け、精神的なパニック状態が長期間続きます。
そのような遺族に対し、学校、教育委員会による事実の隠蔽、早期の訴訟対策的対応が、遺族に対する二次被害となって襲いかかり、そのことが遺族をさらに精神的に追い込むのです。
さらに、地域の有力者、地元の政治家、PTAの有力者などを囲い込むことによって、被害者遺族を孤立させ、極端な話、弁護士に相談することがまるで悪いことであるかのような錯覚を起こさせます。
そして、学校、教育委員会の最終目標は、極論すると遺族に「あなたのお子さんは自殺するような精神的に弱い子なので、いずれ社会に出ても自殺していた」と思い込ませることだと言うのです。
内海氏によると、程度の差こそあれ、このような対応は子供がいじめや体罰で自殺した場合、殆どの学校で行われているとのことでした。
自殺した子供の親であり、また学校の教員であった内海氏ならではの発言に大変な驚きを覚えました。
これからは、このような腐りきった組織を相手に訴訟等を起こすことになるわけですから、身が引き締まる思いを感じました。
しかし、弁護団は情報を共有し、メーリングリスト等で情報交換、相談も自由に出来ます。
難解な案件はこのような訴訟に精通したベテラン弁護士から助言を仰ぐこともできますし、また訴訟に参加してもらうことも可能です。
それゆえ、この弁護団は、いじめ・体罰及び学校事故で被害を受けた生徒、児童にとっては被害回復のための大きな武器になることだと思います。

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2013年8月 6日 火曜日

いじめ問題と時効

 いじめを受けた生徒がいじめを苦にして自殺したり、自殺未遂を図ったりするケースが相変わらず後を絶ちません。
 そのような場合、被害者の生徒、その親はいじめた加害生徒、地方公共団体(市や県)に対し民事訴訟を提起することも多いと思います。
 その場合、大きな壁として立ちはだかるのが「時効」という法律の壁です。
 いじめで加害者や市、県に対して民事訴訟を提起する場合、法律上は不法行為に基づく損害賠償請求、慰謝料請求という形式を取ります。
 しかし、不法行為(わかりやすく言えば故意・過失で他人に損害を与える行為でいじめはまさ不法行為そのものです)を理由とする請求権は、3年経つと時効にかかってしまい法律上消滅してしまいます。
 個人と個人との借金が10年経つと時効で消滅することと同じようなものです。
 典型的な不法行為である交通事故の場合、それが時効で消滅することは実際はそれほどありません。
 交通事故の場合は損害保険会社が間に入るということもありますが、原因と結果がはっきりしており、争いの中心は殆どが損害額です。
 不法行為による損害賠償請求権は、訴訟を提起することで時効がその期間停止しますので、いじめによる被害で加害者等を訴える場合は、3年以内(最後のいじめが行われた時点から3年です)に訴訟を提起しないと、時効で消滅してしまうのです。
 しかし、交通事故の場合と異なっていじめの被害者やその父兄がこの請求権を時効にかけてしまうケースが相当多いと思います。
 それには様々な原因が考えられますが、次のような理由が一番大きいと思います。
 1 まず、いじめで生徒が自殺したり、自殺未遂を図ったような場合、生徒や父兄はその苦痛から立ち直って訴訟を提起しようと決心するまで相当な時間がかかり、ようやくその決心をしたとしても既に時効になっているケースです。
 2 次に、いじめによる自殺(未遂を含めて)の場合は、いじめをした事実、その自殺はいじめが原因であると言い切れるかどうか(これをいじめと自殺との因果関係といいます)
 これらのことを裁判で立証しないとならず、特に因果関係の立証は大変難しく、その立証のための資料を集めているうちに時効にかかってしまうケースです。
 いじめによる自殺(未遂)の事案で、被害者側が、ようやく決心を決めて訴訟提起をすることにしても、時効になった場合、その憤懣をぶつける先がないわけですから、当方は、被害者側は、ある意味で二重の精神的被害に遭ったようなものだと思います。

 3年という期間は案外すぐに経過してしまいます。
 ただ、事が法律で決まったことなので、法治国家に済む我々としては、時効を無視することはできません。
 但し、仮に形式的に時効になっていたとしても、法的な裏技がないわけではありません。

 それゆえ、仮にいじめが原因で我が子が自殺(未遂)した親御さんは、単純に最後のいじめから3年経ったので時効になったものと諦めず、当方にご相談下さい。
 時効をクリアできるかどうかはケースバイケースですが、上手くすると裏技を使って時効の壁を取り除けるかもしれないのです。

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2013年7月 2日 火曜日

いじめのブログ

先月(6月)21日に、児童、生徒のいじめを防ぐため、「いじめ防止対策推進法」が成立し、本年度の秋から施行される予定です。
この法律の成立を後押ししたのは、大津で中学生がいじめを苦に自殺したあの事件であることは間違いありません。
以前から、このような法律の策定が望まれていたのですが、大津の事件でいじめ問題が大きな社会問題となり、国は世論に押される形で法律を策定せざるを得なかったのだと思います。
しかし、いじめ問題についての法律が成立するまで、一体どのくらいの児童、生徒の自殺があったのかを考えると、正直、暗い気持ちにならざるを得ません。
いじめ防止対策推進法(以下単に「いじめ対策法」と略します)のポイントは次の点にあります。

1 学校にいじめ対策に関する組織の常設することを求めたこと
2 重大ないじめが発生した場合
  ①学校は文部科学省や自治体に報告しなくてはなりません。
  ②学校設置者や学校の下に組織を設けて調査しなくてはなりません。
  ③被害者側に適切に調査結果を提供しなくてはならなくなりました。
3 インターネットにおけるいじめは監視などで対策を強化しました。
4 加害児童、生徒に対しては懲戒は出席停止の適切な措置が取られます。
5 保護者は子供に規範意識などを指導しなくてはならないことになりました。

この法律について、様々な媒体で様々な意見が寄せられており、それらを一つ一つ紹介してコメントをする時間もスペースもないので、ここでは私の個人的な感想を簡単に述べさせて頂きます。
これは、様々な媒体で言われていることですが、このいじめ対策法ができた事により、我が国が国として「いじめは非常に悪いことであり、絶対に許さない」との姿勢を明確にできたことは大きな進歩だと思います。
以前、満員電車での痴漢行為は、それが悪質な態様なものでない限り、いつの世にもある犯罪であり、被害者は泣き寝入りすることになってもある意味仕方ないような風潮がありました。
しかし、痴漢行為は女性の人格を大きく傷つける極めて悪質な犯罪であり、小さな痴漢行為であっても絶対に許してはならないという世論が形成され、現在では、痴漢行為があった場合、警察は犯人に対し、極めて厳正な対応をしており、痴漢行為で逮捕されると、犯人の社会的地位は事実上無くなってしまうのが現状です。
いじめも痴漢行為と同様に被害児童、生徒の人格を大きく傷つけるもので、自殺に至るケースも少なくないことを考えるなら、これまでなぜ立法化が放置されてきたのか不思議に思います。
いじめ対策法の問題点は細かく分析するとたくさんありますが、私は次の2つの点が問題だと思います。

・まず第1番目の問題点は、罰則が織り込まれていなかった点です。
罰則は法律の実効性を担保するために設けられるものです。
いじめ問題で、これまで自殺という形で数多くの尊い命が失われていることを考えると、罰則がなく訓示規定のような条項だけでは今度法律が施行された場合の実効性に疑問を感じます。
・第2番目の問題点は、学校は児童、生徒が重大な被害を受けた場合に様々動くべきことが規定されていますが、その段階より前にも何らかのことができるようにすべきだったのではないでしょうか。
 重大な被害が発生した場合の代表例は自殺未遂があったり、不登校が続いているような場合ですが、そうなる前に手を打つべきことが絶対に必要だと思います。

このように、いじめ対策法には問題点もありますが、まずは法律を作って国がそれなりの姿勢を見せたことは評価してよいと思います。
今度は法律の施行後、試行錯誤する中で、この法律をより良いものにしていく必要があると思います。

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2013年5月30日 木曜日

いじめ・体罰問題に取り組むにあたって

いじめ・体罰問題について専用のブログを始めることになり、今回がその第一弾となります。

最近はやや報道が鎮静化しましてが、昨年から今年の初めころまで、いじめ・体罰問題が新聞やテレビで取り上げられない日はないような状況だったことを記憶されていると思います。
それは関西地方で起きた2つのいじめ問題と体罰問題(大津市の中学校でのいじめを苦にしての自殺、大坂の桜宮高校での部活動中の体罰を苦にしての自殺)でした。
一時期は連日のようにマスコミでの報道が続き、類似の自殺事案が相次いで報道されるなど、いじめ・体罰問題は大きな社会問題になりました。
その後、報道は鎮静化し、今ではそれほどいじめ・体罰問題が大きなニュースとして取り上げられることはほとんどなくなりました。
しかし、それは単にいじめ・体罰問題に対するマスコミ報道が鎮静化したというだけで、学校などで連日繰り広げられているいじめ・体罰が鎮静化した訳ではありません。
体罰は学校側の問題ですので、学校側が教師に体罰の禁止を徹底していると思われ、少なくとも表面上は体罰は減っていることだと思います。
しかし、いじめは件数こそ減少しているとは思いますが、いじめの態様がより陰湿なものとなり、実態としては却って深刻化していると言ってよいかもしれません。
そして、いじめ・体罰報道が鎮静化した今こそ、深刻ないじめが以前のように繰り返されているのだと思います。
そのような状況下で、当方は、いじめ・体罰問題について対処するため、現在、仲間の弁護士仲間を募って、いじめ・体罰問題に対応する有志の弁護士グループを結成する準備をしております。
おそらく、このような弁護士グループは我が国でも初めてだと思います。
現在、HPの立上げ、今後の活動方針の策定など、空き時間を縫って準備活動をしていますが、大津市のいじめ自殺のような深刻な事案については、我々弁護士グループが集団で対応するなど、各弁護士の知恵を出し合って被害者生徒・父兄の依頼に応えたいと思っております。

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2013年5月24日 金曜日

いじめや体罰についてのブログ

これから、いじめや体罰についてのブログを掲載していきます。
よろしくお願いいたします。

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