田瀬法律事務所の日記

2014年10月 2日 木曜日

戦後最悪の火山事故とK君の思い出

先日、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山頂上付近で発生した噴火によって10月2日現在47人が亡くなり、戦後の火山事故としては最も多い死者を出すという、大変痛ましい事故になってしまいました。
この事故が起きるまでは平成3年に長崎県の雲仙普賢岳で発生した大規模な火砕流でマスコミ関係者や消防、警察関係者など、
43人が亡くなった事故が戦後最も多くの死者を出した火山事故でした。
当方の高校の同級生で、当時日本経済新聞の報道カメラマンをしていたK君もこの事故で亡くなりました。
雲仙普賢岳の火砕流事故は、普賢岳がそれ以前から大噴火を繰り返しており、二次災害を警戒していた消防、警察関係者や報道の最前線にいたマスコミ関係者の多くが犠牲となりました。
しかし、今回の御嶽山の噴火は、全く予想していなかった突然の噴火であり、当日はカップルや親しい仲間などと秋の紅葉を楽しんでいた景色が一転して地獄絵図に変わったことは想像に難くありません。
雲仙普賢岳で亡くなった報道カメラマンのK君のことがあるので、当方は御嶽山の事故後多くの救助隊が危険を冒して現場で遭難者の捜索や救出する映像を見るにつけ、絶対に二次災害が起こらないでほしいと祈るような思いでニュース映像を見ておりました。
K君とは同じ高校の同級生でしたが、高校時代は個人的な交遊はなく、顔を合わせた場合に軽く会釈をする程度の仲でした。
大学に進学しても、それは同じで、連絡を取り合って飲んだり食べたりするような仲ではありませんでした。
普賢岳の火砕流事故の頃、当方は当時大学受験予備校の講師をしながら司法試験の受験をしておりました。
まさに当方が一番苦しかった時期でした。
高田馬場の司法試験受検予備校で司法試験のセミナーを受けた後の夜の9時ころ、夕食を取るために入った中華定食屋でK君と偶然に顔を合わせ、軽く夕食を取るはずが餃子、焼きそばなどをツマミにしてビールを2人で5、6本飲み干しました。
当時彼は日経新聞の報道カメラマンとして活躍しており、当方は先に述べたとおり事実上の浪人生活を余儀なくされていた時代です。
食事をして別れ際にK君が当方にかけてくれた言葉がまだ、この耳に残っております。
それは「人生照る日曇る日いろいろあるけど、曇りの後には必ず晴れた日が来るから頑張れ」という言葉でした。
それから1年後に雲仙普賢岳の火砕流事故が起きて、K君は帰らぬ人になりました。
今回の御嶽山の噴火事故のニュースを見るたびに、K君の最後の言葉が耳を過ぎります。

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2014年9月 4日 木曜日

生きているうちに・・

今朝のニュースでテニスの錦織圭選手がテニスの4大メジャー大会の1つである全米オープンで準決勝に勝ち進んだ快挙を伝えていました。
テニスの4大メジャー大会で準決勝に勝ち進むことは、快挙の文字通り大変なことです。
世界のメジャースポーツは個人競技ではテニス、ゴルフで団体競技は何と言ってもサッカーです。
日本が過去のオリンピック、世界選手権で優勝した団体競技はワールドベースボールクラシックの野球やオリンピックでのバレーボール、ソフトボールなどですが、残念ながらいずれも日本国内での人気はあるものの、海外ではメジャーな競技とは言えません。
その意味で3年前のなでしこジャパンのワールドカップ優勝、翌年のオリンピック準優勝は大変な快挙だと言ってよいでしょう。
メジャーな個人競技であるテニスでは、かつて杉山愛選手がダブルスで4大大会での優勝を経験し、ゴルフでも樋口久子選手がメジャー大会に優勝しましたが、テニスの4大大会におけるシングルでの優勝者は男女ともにまだ1人もおらず、男子の4大メジャーでの優勝者は出ておりません。
しかし、錦織選手の活躍を見るにつけ、おそらく近いうちに4大大会のいずれかに優勝するのではないかとの期待を抱かせてくれます。
また、ゴルフの松山英樹選手も、錦織選手同様に近い将来の4大メジャー大会のうちの何かの大会の制覇を予見させます。
当方は、生きているうちにいずれかの夢が叶うものと思っていますが、世界最大のスポーツイベント(オリンピックより遙かに視聴者が高いそうです)であるサッカーワールドカップで、日本が優勝する夢は、当方が生きているうちに叶うのでしょうか。
日本はJリーグが始まって以降、世界のサッカー界に実質的にデビューしたようなもので、その意味ではサッカーの発展途上国と言ってよいかもしれません。
そうすると、当方が生きているうちにサムライジャパンがワールドカップを制覇する夢が叶うかどうかは、相当厳しいかもしれません。

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2014年8月14日 木曜日

まんだらけの犯人画像公開の是非

都内の有名漫画店が、店内で販売していた時代物の玩具を万引した犯人の画像を公開するかしないかが注目されていた事案で、店は制限時間ぎりぎりのところで、警察の捜査に委ねるとして画像を公開しないことに踏み切りました。
このニュースは新聞、テレビで広く報道され、賛否両論が寄せられ大きな社会的関心を集めました。
画像公開に賛成する意見は、小規模な商店は万引被害のため店を閉店せざるを得なくなるケースもあり、一罰百戒の意味で画像を公開するべきだというものです。
これに対し、(弁護士などに多かった意見ですが)現代国家が認めていない自力救済を肯定することになり、それは私刑を肯定するもので裁判制度の否定に繋がるというものでした。
双方の意見共に一長一短あり、どちらが正しいのかは簡単に決めることはできないと思います。
当方は、建前的には(当然弁護士としての職業を背景にした意見ですが)画像公開否定意見です。
しかし、想像以上に万引の被害によって商店は経済的に打撃を受けており、それを考えるのであれば画像を公開して一罰百戒的な効能を狙うこともやむを得ないというのが本音です。
万引という犯罪は古典的な犯罪で、犯罪の基本的な形です。
それを防止するためには、防犯カメラを数多く設置し、警備員の数を増やすことが一番ですが、小規模な商店では無理な相談です。
2年くらい前、司法修習の同期会があり、そこには検察官も参加してゴルフをしたのですが、その後の飲み会で検察官が示唆に富む発言をしていましたので紹介します。
それは、高齢者を警備員として安い賃金で雇用してはどうかというものでした。
それによって高齢者は、社会のために働いているという自覚が生まれ、ある程度の小遣銭を稼ぐことができ、店側も人件費のコストを抑えることができるというのです。
そして、個々の店が個別に高齢者を雇うのではなく、全国的な組合組織で高齢者を組織して要請のあった店舗に派遣するというものです。
この方法では、人的資源の有効活用と防犯対策が同時に行うことができ、若干ではありますが景気の刺激にもなります。
当方はこの話を聞いてなるほどと思いました。
読者の方はどうお考えでしょうか?

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2014年8月 5日 火曜日

佐世保の女子高生同級生殺人事件の今後の展開

先日、長崎県の佐世保市で起きた女子高生の同級生殺人事件は、事件の猟奇性、事件の背景など、不謹慎な言い方を許して貰えるなら、メディア的には興味をそそられる情報が満載であり、事件当初に比較して報道は下火になったものの、続報自体は事件から1週間以上経った今日でも報道はされております。
弁護士としては、つい被疑者、その親がどのような責任を取るのかという視点で見てしまいますが、当方なりの今後の展開予想をしてみます。
被疑者の女子高生(被疑者少女といいます)は、今後1ヶ月くらいかけて精神鑑定に付され、そこでは、精神科医、心理学者などが様々な視点で精神分析を行います。
仮に責任能力がないと判定された場合は、精神病院に強制入院となりますが、責任能力があると判断された場合は、家庭裁判所に送致され、家庭裁判所でどう処遇するかが決まります。
おそらく、家庭裁判所は医療少年院という精神病院と少年院の双方の機能がある施設に収容し、そこで治療を中心として処遇が行われます。
家庭裁判所が犯行の残虐性などを理由に通常の刑事裁判として処理すると決めた場合は、裁判員裁判が行われ、そこで刑が宣告されますが、おそらく、そうなる可能性は極めて低く、医療少年院に収容されると思います。
以前、酒鬼薔薇の名で幼児に対し残虐な殺人を犯した中学生は医療少年院に送られました。
仮に、被疑者少女が医療少年院に送られたとしても、報道される事実が本当だとすると、完全に精神的に治癒することは非常に難しいと思います。
酒鬼薔薇は、医療少年院を退院した後で、氏名を代え(特例として認められたようです)、彼が犯行に走ったのは親との確執があったとのことで、里親の元に養子に入り、そこで法務省の担当官の監視のもと通常に就業しているようで、おそらく彼の職場の同僚は彼が酒鬼薔薇だとは知らないと思います。
今回の被疑者少女も、父親との確執が犯行の引き金になったようなので、おそらく酒鬼薔薇と同じようなルートを辿ることが予想されます。
そして、父親は巨額な賠償金を支払うことになると思います。
被疑者少女に責任能力がないと判断された場合、父親は当然に監督責任を取ることになり、被害者の親に慰謝料を支払うことになります。
そして、被疑者少女に責任能力があると判断された場合、法的には彼女に慰謝料を支払が発生しますが、現実的に1億円近い慰謝料を支払うことは現時的に無理なので、父親に慰謝料を支払う義務が発生します。
但しこれは法的にストレートな形で認められるのではなく、父親の被疑者少女に対する子育て、監督が不十分であったと認定されなくてはなりませんが、報道を見る限り、これまでに親としてきちんとした対応をしていれば、このような悲惨な事件を起こさなかったと思われるターニングポイントがいくつかあったと思われますので、おそらく(仮に裁判になったとしても)父親に巨額な慰謝料の支払う責任が認められると思います。
しかし、仮にそうなった場合でも、10代半ばで何の落ち度なく命を奪われた被害者少女は帰ってきません。
そのことを考えると胸が締め付けられるやりきれない思いになります。

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2014年7月28日 月曜日

心にナイフをしのばせて(その2)

前回は、長崎県で発生した高校の女子生徒が同級生の女子生徒を殺害して遺体を切断するという猟奇的な犯罪報道から、44年前に高校の男子生徒が同じような犯罪を犯し、加害生徒がその後弁護士となっていたことが明らかとなったことをお伝えしました。
そして、その弁護士に一部メディアが接近したことから、彼は弁護士を廃業したことを伝え、過去におぞましい犯罪に手を染めた者が弁護士になることの是非について論及するという形で終わりました。
司法試験に合格するかどうかは、過去の事実は無関係ですので、仮に過去におぞましい犯罪に手を染めていた者を排除するかどうかは、合格後に実務家としての登用をする司法修習生時代に決せられます。
そうすると司法修習生の身分を管理するのは最高裁判所であり、当然最高裁判所(事務局)は、司法修習生の犯歴も把握していると思います。
話は脱線しますが、当方も学生時代にスピード違反で罰金を払った過去があり、当時の最高裁はそのことを把握していたと思います。
例のおぞましい犯罪を犯した弁護士の過去は、彼が司法修習生時代に最高裁は把握しつつ、敢えて排除しなかった可能性が高いと思います。
例の弁護士の過去が明らかとなって一部メディアが騒いだ頃、同じ弁護士会で親しくお付き合いをさせて頂いている先輩の弁護士とその件で飲みながら話をしたところ、司法研修所の教官の経歴がある先輩弁護士は次のように語っておりました。

1 もし、仮に過去のおぞましい犯歴を理由に、司法修習生として登用しないと最高裁が判断すると、 最高裁(国)はその司法修習生から職業選択の自由を侵害されたとして国家賠償を提起される可能性が高い

2 仮にそうなった場合、そのことが報道され、最高裁がある意味で批判の矢面に立つことになるが、最高裁はそのようなことは絶対に避けるはずである

3 そうすると、そのような面倒な場面に遭遇することを避ける意味で、おぞましい過去を知りつつ実務家として登用し、面倒な場面への遭遇を避けるはずである

要は、最高裁は面倒なことに巻き込まれるのが嫌で「臭いものに蓋」的な発想で、例えおぞましい過去を持つ者でも司法試験に合格さえしておれば、その後はその事実を知りつつも実務家として登用するらしいというのです。
当方は、その場合、最高裁は実務家として登用することを拒否すべきで、仮に国家賠償訴訟を起こされてても、堂々と闘うべきだと思います。
普通の一般人が法曹(裁判官、検察官、弁護士)に国を震撼させるおぞましい過去があったことを知った場合、司法に対する信頼がそのままであるはずがありません。
罪を償いをした場合は全て許されるということは、一つの原則ですが、どのような原則にも例外があるとおり、罪を償う場合にも例があると思います。
例の弁護士がおそらく罪を償うつもりで一生懸命に勉強し、司法試験に合格して弁護士として活動することでさらに罪の償いをしようとしたのかもしれません。
しかし、厳しい言い方ですが、償う方向性が間違っていたと当方は思います。
もっと別の方法での償い方があったはずだと思います。
償い方を間違えたことで、家族を含む回りの人物にどれだけ辛い気持ちを味わわせたのかを、その元弁護士は知らなくてはいけません。
今はおそらく名前、職業を変え、この国のどこかでひっそりと生活していると思いますが、償いはまだ終わっておらず、一生続くことを肝に銘じるべきです。

投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士) | 記事URL

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