田瀬法律事務所の日記
2011年12月21日 水曜日
刑事事件の報道、ドラマの刑事法廷の現実との違い
新聞で、刑事事件を犯して裁判にかけられることを「起訴される」と言います。
そうすると、それまで○○容疑者と呼ばれていた犯人は○○被告という呼び名に変わります。
これは新聞、雑誌、テレビの3者で皆同じ扱いです。
でも、これは正しい呼び方ではありません。
特に○○被告というのは法的にも間違った呼び方なのです。
起訴されるまでの○○容疑者という呼び方は、正確に言うと、○○被疑者と呼ぶべきなのです。
ただし、被疑者という呼び方は、警察、検察関係者、弁護士以外はあまり使いません。
それゆえ、○○容疑者も誤った呼び方とまでは言えないと思います。
しかし、起訴されてからの○○被告という呼び方は完全に誤った呼び方です。
正確には○○被告人と呼ぶべきなのです。
○○被告という呼び方は、民事訴訟で訴訟を提起された側、つまり訴えられた側の者を指す民事訴訟特有の呼び方で、刑事事件で起訴された被疑者は、起訴を境に、○○被告人と呼ばれるべきなのです。
2時間ドラマなどで刑事法廷が舞台になる場合、裁判が始まる(終わる)時に裁判長が被告人に対し「被告は前に出なさい」と促すシーンを時折目にしますが、正式には「被告人は前に出なさい」と言うべきなのです(ただ最近の法廷シーンでは「被告人は・・・」という台詞を使用している場面も時々目にします)。 本物の刑事法廷で「被告は前に出なさい」と促す裁判官(裁判長)は絶対いないと思います。 それと、刑事法廷が舞台になるシーンで、裁判官席に3人の裁判官が座る場面が映る時があります。 映画、テレビではほぼ50代から60代と思しき男性が、絵に描いたように3人並んでいます。 そこには、女性の裁判官はまずいません。 また、20代や30代と思しき裁判官もまず出てきません。 裁判官が3人の法廷を合議法廷と言い、中央は裁判長、傍聴席に向かって右に座る裁判官は右陪席裁判官、左に座る裁判官が左陪席裁判官と呼ばれます。 この3人の裁判官裁判には、裁判長-右陪席裁判官-左陪席裁判官という絶対的な序列があります。 裁判所の中で一番よく使われる「地方裁判所」の場合、裁判長は概ね40代から50代前半で、右陪席が30代から40代前半、左陪席が20代半ばから30代前半です。 また最近は女性裁判官の数が増え、3人中2人が女性ということも珍しくありません。 さらに全員女性というケースもあります(私も民事訴訟ですが一度だけそのような組み合わせの裁判官に当たったことがあります)。 司法試験に合格するには短期間で合格する人がいる一方で、苦労して合格する人もおり、短期間で司法試験に合格した人は40歳くらいで裁判長になるケースもありますが、苦労して合格した人は50歳くらいで裁判長になるケースもあります。 しかし、60歳の地方裁判所の裁判長は殆どいないと思いますし、いわんや50代、60代の左陪席裁判官など絶対にあり得ません。 物理的には司法試験に25回目の挑戦で合格すると50代の左陪席裁判官もあり得ますが、裁判官に採用してもらうためには、最大限5回前後で司法試をパスしなくてはならず、25回もかかった人は絶対に裁判官に採用してもらえないのです。 私が司法試験に合格した頃から女性合格者の数が急に増え始め、現在司法試験の合格者中の女性比率は20%台後半と言われています。 そうすると、今後は、3人の裁判官全員が女性ということも珍しくないのかもしれませんね。 ちなみに、私は弁護士になって3年目くらいに我が国の3大新聞の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3社に、刑事事件の被告人を○○被告というのはおかしいのではないかという指摘をした投稿をしました(弁護士としての身分と氏名を明らかにした上での投稿です)。 そのうち、朝日と読売から回答が文書で寄せられました。 細かい文面は異なりますが、双方は同じ趣旨の内容でした。 要は○○被告人という呼び方が正しく、○○被告という呼び方は正しくないことはわかているが、長期間、そのような呼び方で報道がなされており、刑事事件で起訴をされた容疑者は○○被告というように呼ばれるのが、国民の間で広く浸透していて、今更、その呼び方が正しくないと言って○○被告人という呼び方にするのも、却って国民に混乱を引き起こし兼ねないということです。 その上で、○○被告が正しい呼び方だというのは警察、検察、裁判関係者、弁護士がわかってさえいればよいというのです。 私は、その回答を聞いて、あまり説得的な回答だとは思えませんでしたが、みなさんはどう考えますか?
そうすると、それまで○○容疑者と呼ばれていた犯人は○○被告という呼び名に変わります。
これは新聞、雑誌、テレビの3者で皆同じ扱いです。
でも、これは正しい呼び方ではありません。
特に○○被告というのは法的にも間違った呼び方なのです。
起訴されるまでの○○容疑者という呼び方は、正確に言うと、○○被疑者と呼ぶべきなのです。
ただし、被疑者という呼び方は、警察、検察関係者、弁護士以外はあまり使いません。
それゆえ、○○容疑者も誤った呼び方とまでは言えないと思います。
しかし、起訴されてからの○○被告という呼び方は完全に誤った呼び方です。
正確には○○被告人と呼ぶべきなのです。
○○被告という呼び方は、民事訴訟で訴訟を提起された側、つまり訴えられた側の者を指す民事訴訟特有の呼び方で、刑事事件で起訴された被疑者は、起訴を境に、○○被告人と呼ばれるべきなのです。
2時間ドラマなどで刑事法廷が舞台になる場合、裁判が始まる(終わる)時に裁判長が被告人に対し「被告は前に出なさい」と促すシーンを時折目にしますが、正式には「被告人は前に出なさい」と言うべきなのです(ただ最近の法廷シーンでは「被告人は・・・」という台詞を使用している場面も時々目にします)。 本物の刑事法廷で「被告は前に出なさい」と促す裁判官(裁判長)は絶対いないと思います。 それと、刑事法廷が舞台になるシーンで、裁判官席に3人の裁判官が座る場面が映る時があります。 映画、テレビではほぼ50代から60代と思しき男性が、絵に描いたように3人並んでいます。 そこには、女性の裁判官はまずいません。 また、20代や30代と思しき裁判官もまず出てきません。 裁判官が3人の法廷を合議法廷と言い、中央は裁判長、傍聴席に向かって右に座る裁判官は右陪席裁判官、左に座る裁判官が左陪席裁判官と呼ばれます。 この3人の裁判官裁判には、裁判長-右陪席裁判官-左陪席裁判官という絶対的な序列があります。 裁判所の中で一番よく使われる「地方裁判所」の場合、裁判長は概ね40代から50代前半で、右陪席が30代から40代前半、左陪席が20代半ばから30代前半です。 また最近は女性裁判官の数が増え、3人中2人が女性ということも珍しくありません。 さらに全員女性というケースもあります(私も民事訴訟ですが一度だけそのような組み合わせの裁判官に当たったことがあります)。 司法試験に合格するには短期間で合格する人がいる一方で、苦労して合格する人もおり、短期間で司法試験に合格した人は40歳くらいで裁判長になるケースもありますが、苦労して合格した人は50歳くらいで裁判長になるケースもあります。 しかし、60歳の地方裁判所の裁判長は殆どいないと思いますし、いわんや50代、60代の左陪席裁判官など絶対にあり得ません。 物理的には司法試験に25回目の挑戦で合格すると50代の左陪席裁判官もあり得ますが、裁判官に採用してもらうためには、最大限5回前後で司法試をパスしなくてはならず、25回もかかった人は絶対に裁判官に採用してもらえないのです。 私が司法試験に合格した頃から女性合格者の数が急に増え始め、現在司法試験の合格者中の女性比率は20%台後半と言われています。 そうすると、今後は、3人の裁判官全員が女性ということも珍しくないのかもしれませんね。 ちなみに、私は弁護士になって3年目くらいに我が国の3大新聞の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3社に、刑事事件の被告人を○○被告というのはおかしいのではないかという指摘をした投稿をしました(弁護士としての身分と氏名を明らかにした上での投稿です)。 そのうち、朝日と読売から回答が文書で寄せられました。 細かい文面は異なりますが、双方は同じ趣旨の内容でした。 要は○○被告人という呼び方が正しく、○○被告という呼び方は正しくないことはわかているが、長期間、そのような呼び方で報道がなされており、刑事事件で起訴をされた容疑者は○○被告というように呼ばれるのが、国民の間で広く浸透していて、今更、その呼び方が正しくないと言って○○被告人という呼び方にするのも、却って国民に混乱を引き起こし兼ねないということです。 その上で、○○被告が正しい呼び方だというのは警察、検察、裁判関係者、弁護士がわかってさえいればよいというのです。 私は、その回答を聞いて、あまり説得的な回答だとは思えませんでしたが、みなさんはどう考えますか?
投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士) | 記事URL
2011年12月15日 木曜日
忘年会は祭りだ
弁護士も走る12月ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
事務員Yです。
さて、本日は先週おこなわれた、事務所忘年会の様子についてお届けします。
平成23年12月9日、恵比寿『卯夢』にて忘年会を開催しました。
参加者は、事務所のメンバー全員に加え、品川の法律事務所に勤務のA事務員、そしてときどき本ブログにも登場している女性弁護士のS先生をゲストにお迎えし、計7名で行われました。
卯夢は、鶏肉料理のお店です。串の盛り合わせやら唐揚げやらが美味しかったですね。オススメです。
品川のA事務員は、とても感じのいい女性で、代表弁護士の田瀬はえらく気に入っている様子でした。
というのも、普段一緒にいる自分トコの事務員がかわいげがないからなんでしょうが、考えてみれば、事務局の私たちだって他の事務所の先生に対しては感じよくしているわけです。
そんなこんなで、宴は終電近くまで続きました。
みなさんも、忘年会シーズン真っ最中かと存じますが、飲みすぎにはじゅうぶんご注意くださいませ。
事務員Yです。
さて、本日は先週おこなわれた、事務所忘年会の様子についてお届けします。
平成23年12月9日、恵比寿『卯夢』にて忘年会を開催しました。
参加者は、事務所のメンバー全員に加え、品川の法律事務所に勤務のA事務員、そしてときどき本ブログにも登場している女性弁護士のS先生をゲストにお迎えし、計7名で行われました。
卯夢は、鶏肉料理のお店です。串の盛り合わせやら唐揚げやらが美味しかったですね。オススメです。
品川のA事務員は、とても感じのいい女性で、代表弁護士の田瀬はえらく気に入っている様子でした。
というのも、普段一緒にいる自分トコの事務員がかわいげがないからなんでしょうが、考えてみれば、事務局の私たちだって他の事務所の先生に対しては感じよくしているわけです。
そんなこんなで、宴は終電近くまで続きました。
みなさんも、忘年会シーズン真っ最中かと存じますが、飲みすぎにはじゅうぶんご注意くださいませ。
投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士) | 記事URL
2011年12月 9日 金曜日
オリンパスの命運やいかに
弁護士の田瀬です。
光学機器の名門企業のオリンパスが揺れています。
長い歴史を誇る我が国を代表する光学機器メーカーのオリンパスで巧妙な損失隠しがあったことが明らかになりました。
それは、損失隠しを公表しようとした当時の英国人社長が、当時の会長であった菊川剛氏の強い意向によって、取締役会で社長を解任されたことが切っ掛けでした。
その後、会社の損失隠しの全貌が明らかになる過程で、菊川氏やその側近の役員は全て取締役も退任せざるを得なくなり、現在は、法的にはオリンパスと何の関係もなくなりました。
今回の不祥事でオリンパスの株価は大きく値を下げ、それは会社の財産の毀損を意味しますので、菊川氏らは会社から多額の損害賠償を求められる訴訟を起こされ、最悪の場合は全財産を失う恐れすら出てきました(仮に家や土地などを親族の名義に変えた場合は「詐害行為取消訴訟」を提起され、その結果、名義変更の効力が否定されます)。
現在は行っておりませんが、過去に、菊川氏がメンバーになっている15名程度のゴルフの集まりがあって、その集まりで行うゴルフが年に数回くらいありました。
私も毎回ではありませんが、年に3回くらい、その集まりでのゴルフに参加しました。
菊川氏は、毎年12月のクリスマスから大晦日までの期間(12月25日から31日まで)に開催される、その集まりでのゴルフにのみ参加することが恒例となっているようでした。
私は平成17年、18年の12月28日ないし29日ころ、川崎市のよみうりランドの近くにある「よみうりゴルフ倶楽部」で、同氏と一緒にラウンド(2回のラウンドのうち1回は同じ組になりました)しました。
菊川氏は、非常にゴルフがご上手で、私が同氏と一緒にラウンドした2回とも、参加者中の最高のスコア(ベスグロ賞)でした(ちなみに私は1回目が95前後、2回目は100前後のスコアだったように思います)。
菊川氏のスコアは、当時のスコアブックを紛失したようなので正確にはわかりませんが、2回とも多分85くらいだったように思います。
菊川氏は非常に紳士的な方で、さすがに名門の大企業の最高責任者は違うものだと感心した記憶があります。
一緒にコースを歩きながら、ゴルフが上達する秘訣を聞いた私に対して、菊川氏から「忙がしいことを理由に練習をサボっているようだと、いつまでたってもゴルフは上達しません。自分が出なくてもよい酒の席ならゴルフの練習を優先させなくてはなりません」というアドバイスを頂きました。
常に酒の席を優先して、あまり真面目に練習をしない私には、そのアドバイスはとても耳の痛いものでした。
オリンパスのニュースに接する度に、菊川氏から頂戴したゴルフのアドバイスが頭に浮かびます。
オリンパスの事件のニュースが報じられるようになってから、ゴルフの練習に通う回数が増えたのは偶然ではないように思います。
光学機器の名門企業のオリンパスが揺れています。
長い歴史を誇る我が国を代表する光学機器メーカーのオリンパスで巧妙な損失隠しがあったことが明らかになりました。
それは、損失隠しを公表しようとした当時の英国人社長が、当時の会長であった菊川剛氏の強い意向によって、取締役会で社長を解任されたことが切っ掛けでした。
その後、会社の損失隠しの全貌が明らかになる過程で、菊川氏やその側近の役員は全て取締役も退任せざるを得なくなり、現在は、法的にはオリンパスと何の関係もなくなりました。
今回の不祥事でオリンパスの株価は大きく値を下げ、それは会社の財産の毀損を意味しますので、菊川氏らは会社から多額の損害賠償を求められる訴訟を起こされ、最悪の場合は全財産を失う恐れすら出てきました(仮に家や土地などを親族の名義に変えた場合は「詐害行為取消訴訟」を提起され、その結果、名義変更の効力が否定されます)。
現在は行っておりませんが、過去に、菊川氏がメンバーになっている15名程度のゴルフの集まりがあって、その集まりで行うゴルフが年に数回くらいありました。
私も毎回ではありませんが、年に3回くらい、その集まりでのゴルフに参加しました。
菊川氏は、毎年12月のクリスマスから大晦日までの期間(12月25日から31日まで)に開催される、その集まりでのゴルフにのみ参加することが恒例となっているようでした。
私は平成17年、18年の12月28日ないし29日ころ、川崎市のよみうりランドの近くにある「よみうりゴルフ倶楽部」で、同氏と一緒にラウンド(2回のラウンドのうち1回は同じ組になりました)しました。
菊川氏は、非常にゴルフがご上手で、私が同氏と一緒にラウンドした2回とも、参加者中の最高のスコア(ベスグロ賞)でした(ちなみに私は1回目が95前後、2回目は100前後のスコアだったように思います)。
菊川氏のスコアは、当時のスコアブックを紛失したようなので正確にはわかりませんが、2回とも多分85くらいだったように思います。
菊川氏は非常に紳士的な方で、さすがに名門の大企業の最高責任者は違うものだと感心した記憶があります。
一緒にコースを歩きながら、ゴルフが上達する秘訣を聞いた私に対して、菊川氏から「忙がしいことを理由に練習をサボっているようだと、いつまでたってもゴルフは上達しません。自分が出なくてもよい酒の席ならゴルフの練習を優先させなくてはなりません」というアドバイスを頂きました。
常に酒の席を優先して、あまり真面目に練習をしない私には、そのアドバイスはとても耳の痛いものでした。
オリンパスのニュースに接する度に、菊川氏から頂戴したゴルフのアドバイスが頭に浮かびます。
オリンパスの事件のニュースが報じられるようになってから、ゴルフの練習に通う回数が増えたのは偶然ではないように思います。
投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士) | 記事URL
2011年12月 8日 木曜日
オリンピックメダリストが性犯罪で逮捕
弁護士の田瀬です。
先日、女性9人に性的暴行(強姦、強姦致傷)をした男に、懲役24年の判決と懲役26年の2つの判決が下り、合計50年刑務所で服役することになったというニュースが新聞、テレビのニュースで大きく取り上げられました。
犯人は35歳ということですので、刑務所で人生を終える可能性もあります。
仮に刑期を数年残して仮出所しても80歳を過ぎていて、生きている身内も少ないでしょうから、その後の余生はあまりにも荒涼たる人生です。
邪(よこしま)な欲望のために女性の心身を蹂躙したツケは、極めて重かったと言わざるを得ません。
性犯罪の代表である強姦、強姦致傷は、今や殺人に匹敵する重い犯罪になりました。
殺人でも、例えば、男女間で愛憎のもつれから泥沼の関係となり、被害者が加害者の人格を冒涜する発言をするなど、被害者にも相当な非があるような場合や、無理心中をして生き残ってしまった場合などは、10年以下の懲役ということもあるので、強姦、強姦致傷は、場合によっては殺人より重い罪だと言えるかもしれません。
今週、アテネ、北京という2つのオリンピックで2つの金メダルを獲得した柔道家の内柴正人容疑者が、勤務する熊本県内の大学の柔道部員(未成年者)に対するセクハラを理由に、大学を懲戒解雇された後、同じ未成年者が酒を飲んで抵抗できないことに乗じて性的暴行を加え、準強姦罪で逮捕されたニュースは全国民に衝撃を与えました。
私は、内柴容疑者の2回のオリンピックでの決勝戦をテレビで見ておりました。
2つの決勝戦はともに、非常に切れる立ち技で相手から鮮やかな一本を取り、これぞ日本柔道という勝ち方に、私はテレビ桟敷から大歓声を送ったことを思い出しました。
その後引退して指導者の道を歩み始めた矢先に今回の事件です。
内柴容疑者の逮捕は海外でも大きく報道され、「日本の国技の柔道のオリンピックチャンピョンが未成年者をレイプして逮捕された」とセンセーショナルに報道されているようです。
確かに国技の柔道で金メダルを2つ取った国民的英雄の不祥事は前代未聞です。
内柴容疑者は、逮捕容疑となった事実について、女性の合意があったので強姦にはならないとの言い訳をしていると報道されています。
当方は、性犯罪について犯人を弁護する側、被害者の女性からの依頼で犯人を告訴する側の両方で係わった経験が合わせて数件あります。
多くの人がいる場面で性犯罪の代表である強姦行為は行われません。
当然の性質上、犯行は密室で行われ、犯行を目撃している人はいないのが通常です。
被害を受けた直後に病院に行って、強姦が行われた痕跡が体に残っている場合は、割と犯行を立証し易いのですが、日にちが経てば経つほど犯行の立証は難しくなります。
しかし、犯行から暫く経った場合、犯行の立証は無理かというとそうではありません。
現に、内柴容疑者の場合犯行は9月19日とされており、逮捕は1ヶ月半以上が経過しています。
これは、被害者の訴えの中味が極めて詳細で、犯行の前後の被害者、加害者の行動状況から見て、内柴容疑者がほぼ女性が意識をなくし欠けているのに乗じて犯行を行ったに間違いないと警察が確信したから、今回の逮捕に繋がったのだと思います。
そうでなければ、この逮捕によって内柴容疑者が失うものはあまりにも多く、極端な話、内柴容疑者の今後の人生が余生になるかどうか変わってきますので、警察が内柴容疑者の犯行を確信したので、逮捕という強硬策に出たのだと思います。
この逮捕で、内柴容疑者は、まだ30代半ばであるのに、その後の人生が、完全な余生になってしまうでしょう。
極端な言い方をするなら、その後の余生は息をして食べ物を食べているだけの、単なる「生物」としての生活となってしまう可能性があるからです。
大学は既に懲戒解雇されておりますが、今後、それ以外に失う名誉、栄誉は凄まじいの一言に尽きます。
有罪判決が下るという条件が付くでしょうが、柔道界から永久追放されることは確実で、上級者の象徴ともいうべき黒帯の剥奪ということも考えられます。
また、出身の県や町から送られた県民栄誉賞、町民栄誉賞も取り消される模様で、そうなると、現在住んでいる熊本県にある小さな街にはもう住めないでしょう。
おそらく、奥さんから離婚を求められることは必至で、事実上、最愛の家族とも別れなくてはならない状況になるでしょう。
なぜ、国民的英雄まで上り詰め、最高の栄誉に輝いた稀代の柔道家が、一瞬の邪な欲望に負けたのか理解に苦しみます。
とりわけ、礼節を旨とする競技とも言うべき柔道の世界で世界最高の栄誉に2回も輝いたにもかかわらず、一瞬でそれをフイにしてしまうのですから、邪な欲望に負けることのツケは大変に重いことを改めて思い知りました。
先日、女性9人に性的暴行(強姦、強姦致傷)をした男に、懲役24年の判決と懲役26年の2つの判決が下り、合計50年刑務所で服役することになったというニュースが新聞、テレビのニュースで大きく取り上げられました。
犯人は35歳ということですので、刑務所で人生を終える可能性もあります。
仮に刑期を数年残して仮出所しても80歳を過ぎていて、生きている身内も少ないでしょうから、その後の余生はあまりにも荒涼たる人生です。
邪(よこしま)な欲望のために女性の心身を蹂躙したツケは、極めて重かったと言わざるを得ません。
性犯罪の代表である強姦、強姦致傷は、今や殺人に匹敵する重い犯罪になりました。
殺人でも、例えば、男女間で愛憎のもつれから泥沼の関係となり、被害者が加害者の人格を冒涜する発言をするなど、被害者にも相当な非があるような場合や、無理心中をして生き残ってしまった場合などは、10年以下の懲役ということもあるので、強姦、強姦致傷は、場合によっては殺人より重い罪だと言えるかもしれません。
今週、アテネ、北京という2つのオリンピックで2つの金メダルを獲得した柔道家の内柴正人容疑者が、勤務する熊本県内の大学の柔道部員(未成年者)に対するセクハラを理由に、大学を懲戒解雇された後、同じ未成年者が酒を飲んで抵抗できないことに乗じて性的暴行を加え、準強姦罪で逮捕されたニュースは全国民に衝撃を与えました。
私は、内柴容疑者の2回のオリンピックでの決勝戦をテレビで見ておりました。
2つの決勝戦はともに、非常に切れる立ち技で相手から鮮やかな一本を取り、これぞ日本柔道という勝ち方に、私はテレビ桟敷から大歓声を送ったことを思い出しました。
その後引退して指導者の道を歩み始めた矢先に今回の事件です。
内柴容疑者の逮捕は海外でも大きく報道され、「日本の国技の柔道のオリンピックチャンピョンが未成年者をレイプして逮捕された」とセンセーショナルに報道されているようです。
確かに国技の柔道で金メダルを2つ取った国民的英雄の不祥事は前代未聞です。
内柴容疑者は、逮捕容疑となった事実について、女性の合意があったので強姦にはならないとの言い訳をしていると報道されています。
当方は、性犯罪について犯人を弁護する側、被害者の女性からの依頼で犯人を告訴する側の両方で係わった経験が合わせて数件あります。
多くの人がいる場面で性犯罪の代表である強姦行為は行われません。
当然の性質上、犯行は密室で行われ、犯行を目撃している人はいないのが通常です。
被害を受けた直後に病院に行って、強姦が行われた痕跡が体に残っている場合は、割と犯行を立証し易いのですが、日にちが経てば経つほど犯行の立証は難しくなります。
しかし、犯行から暫く経った場合、犯行の立証は無理かというとそうではありません。
現に、内柴容疑者の場合犯行は9月19日とされており、逮捕は1ヶ月半以上が経過しています。
これは、被害者の訴えの中味が極めて詳細で、犯行の前後の被害者、加害者の行動状況から見て、内柴容疑者がほぼ女性が意識をなくし欠けているのに乗じて犯行を行ったに間違いないと警察が確信したから、今回の逮捕に繋がったのだと思います。
そうでなければ、この逮捕によって内柴容疑者が失うものはあまりにも多く、極端な話、内柴容疑者の今後の人生が余生になるかどうか変わってきますので、警察が内柴容疑者の犯行を確信したので、逮捕という強硬策に出たのだと思います。
この逮捕で、内柴容疑者は、まだ30代半ばであるのに、その後の人生が、完全な余生になってしまうでしょう。
極端な言い方をするなら、その後の余生は息をして食べ物を食べているだけの、単なる「生物」としての生活となってしまう可能性があるからです。
大学は既に懲戒解雇されておりますが、今後、それ以外に失う名誉、栄誉は凄まじいの一言に尽きます。
有罪判決が下るという条件が付くでしょうが、柔道界から永久追放されることは確実で、上級者の象徴ともいうべき黒帯の剥奪ということも考えられます。
また、出身の県や町から送られた県民栄誉賞、町民栄誉賞も取り消される模様で、そうなると、現在住んでいる熊本県にある小さな街にはもう住めないでしょう。
おそらく、奥さんから離婚を求められることは必至で、事実上、最愛の家族とも別れなくてはならない状況になるでしょう。
なぜ、国民的英雄まで上り詰め、最高の栄誉に輝いた稀代の柔道家が、一瞬の邪な欲望に負けたのか理解に苦しみます。
とりわけ、礼節を旨とする競技とも言うべき柔道の世界で世界最高の栄誉に2回も輝いたにもかかわらず、一瞬でそれをフイにしてしまうのですから、邪な欲望に負けることのツケは大変に重いことを改めて思い知りました。
投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士) | 記事URL
2011年12月 6日 火曜日
少し堅苦しいお話をしたようなので
弁護士の田瀬です。
前回は、刑事事件と死刑という、非常に固くまた重苦しいお話をしたので、今回は話題を変えて、ちょっと法律の話から離れてスポーツ(プロ野球)のお話をしたいと思います。
先日、中日対ソフトバンクの日本シリーズが行われ、戦前は圧倒的有利と言われていたソフトバンクが中日の奮闘に思わぬ苦戦を強いられて最終戦までもつれ、ソフトバンクが追いすがる中日を何とか振り切って、栄えある日本一の栄冠を手にしました。
7戦のうち、5点以上の大量得点をした試合は1試合だけで、残りの6戦は1点、2点を争う緊迫した試合で、近年稀に見る密度の濃い日本シリーズだったと思います。
私も最終戦は家のテレビで観戦していました。
中日の最後のバッターの和田選手が空振り三振をしてゲームセットになった瞬間に、ソフトバンクのベンチから全選手がマウンドに駆け寄り、大きな輪を作って万歳三唱を始め、やがて秋山監督がマウンドに駆け寄ると、恒例の優勝監督の胴上げが始まり、秋山監督の体が何回も宙に舞いました。
その後、ソフトバンクのベンチから、球団のジャンパーを身にまとった孫オーナーが、両手を大きく上げてマウンドに走り寄り、選手と握手をしたり、抱き合ったりして、日本一の喜びを全身で表しておりました。
そのうち、選手が孫オーナーを担ぎ上げて、胴上げが始まりました。
小柄な孫オーナーの体は秋山監督より高く宙に舞い、私も見ていて、とても清々しい気持ちになりました。
私は日本シリーズで優勝が決まった後の監督の胴上げシーンは過去に数え切れないくらい見ておりますが、オーナーが胴上げされたシーンは見たことがありません。
高校野球なら、校長先生が、大学野球なら学長(総長)が胴上げされるようなものでしょう。
ソフトバンクは、非常に長いシリーズになった上戸彩とお父さんの犬のCM(白戸家シリーズ)が引き続き好評で、今回の孫オーナーの胴上げシーンはソフトバンクの更なるイメージアップに繋がったと思います。
それに引き換え、球界の盟主を標榜するジャイアンツのあの体たらくは一体何なのでしょう。
プロ野球の1年の総決算とも言うべき日本シリーズの始まる前に、清武前代表が球団内部の人事抗争をさらけだすような形で記者会見を行ったことが戦いの火ぶたとなって、その後も「ああ言えば、こう言う」パターンで清武前代表と渡邊会長とが互いを罵り合い、挙句の果てに双方が法廷闘争を宣言し合う始末です(マスコミネタとしては面白いネタだと思います)。
ソフトバンクが日本一になった瞬間に、これが人生最大の喜びであるかのように、マウンドに走り寄って選手から胴上げをされ、顔くしゃくしゃにして宙に舞っていた孫オーナーの清々しい姿に比べ、ジャイアンツは老醜の極みにような渡邊会長の傲岸不遜な態度と、人事抗争を公表した際に泣きながら貴社会見をした清武前球団代表の軟弱振りが、鮮やかなコントラストを描いていたような気がします。
若干法律の話になりますが、ちょっとだけお付き合い下さい。
渡邊会長と清武前代表との法廷闘争は、渡邊会長が圧倒的に有利です。
渡邊会長のこれまでのやり方は、道義的、常識的な見方からすると、やや疑問符が付くものもあり、私は渡邊会長は政治記者としては大変優秀だったと思いますが、ジャイアンツのトップに君臨するようになってからは、晩節を汚すような振る舞いばかりが目立つように思われます。
しかし、清武前代表が、渡邊会長のことを、オリンパスの損失隠しに関与した最高幹部や、カジノで100億円以上費消した大王製紙の前会長と同じレベルで捉えて語るのは極めて問題だと思います。
私はその1点だけで、清武前代表の資質には疑問符が付くと思います。
オリンパスの最高幹部や大王製紙の前会長のやったことは明白な犯罪行為です(現に大王製紙の前会長は特別背任という罪で逮捕されました)が、渡邊会長の振るまいや今回批判されていることは、道義的にはともかく、犯罪ではありません。
それゆえ、オリンパスの解任された英国人の元社長が最高幹部を糾弾する会見をすることは社会的な意味が大いにありますが、球団内部の人事抗争を殊更に公表して渡邊会長を糾弾する清武前代表のやり方に対し、支持が全くと言ってよいくらい集まらないのは、ある意味で当然のように思います。
また日本シリーズの話にちょっと戻ります。
今回惜しくもソフトバンクに敗れた中日の落合前監督は、ペナントレース最終盤に、優勝し続けても観客動員数が伸びないという、訳のわからない理由で今期限りでの解任を一方的に通告されたにもかかわらず、その後驚異的な勝率でヤクルトを捕えてセリーグのペナントレースを制し、圧倒的不利が予想された日本シリーズでも戦前の予想を覆して、日本一まであと一歩のところまで詰め寄りました。
その間、一言も球団に対する不満を公には言わず、黙々とセリーグの優勝と日本一を目指して寡黙に邁進し続けた落合監督の男の美学も光っていました。
以上、今年のプロ野球は終盤に大きなドラマがあって、大いに盛り上がったのですが、同時に、球界の盟主を標榜するジャイアンツが、その盛り上がりに水をかけるような振る舞いをして、球界の盟主の醜態をさらけ出したシーズンだったと思います。
前回は、刑事事件と死刑という、非常に固くまた重苦しいお話をしたので、今回は話題を変えて、ちょっと法律の話から離れてスポーツ(プロ野球)のお話をしたいと思います。
先日、中日対ソフトバンクの日本シリーズが行われ、戦前は圧倒的有利と言われていたソフトバンクが中日の奮闘に思わぬ苦戦を強いられて最終戦までもつれ、ソフトバンクが追いすがる中日を何とか振り切って、栄えある日本一の栄冠を手にしました。
7戦のうち、5点以上の大量得点をした試合は1試合だけで、残りの6戦は1点、2点を争う緊迫した試合で、近年稀に見る密度の濃い日本シリーズだったと思います。
私も最終戦は家のテレビで観戦していました。
中日の最後のバッターの和田選手が空振り三振をしてゲームセットになった瞬間に、ソフトバンクのベンチから全選手がマウンドに駆け寄り、大きな輪を作って万歳三唱を始め、やがて秋山監督がマウンドに駆け寄ると、恒例の優勝監督の胴上げが始まり、秋山監督の体が何回も宙に舞いました。
その後、ソフトバンクのベンチから、球団のジャンパーを身にまとった孫オーナーが、両手を大きく上げてマウンドに走り寄り、選手と握手をしたり、抱き合ったりして、日本一の喜びを全身で表しておりました。
そのうち、選手が孫オーナーを担ぎ上げて、胴上げが始まりました。
小柄な孫オーナーの体は秋山監督より高く宙に舞い、私も見ていて、とても清々しい気持ちになりました。
私は日本シリーズで優勝が決まった後の監督の胴上げシーンは過去に数え切れないくらい見ておりますが、オーナーが胴上げされたシーンは見たことがありません。
高校野球なら、校長先生が、大学野球なら学長(総長)が胴上げされるようなものでしょう。
ソフトバンクは、非常に長いシリーズになった上戸彩とお父さんの犬のCM(白戸家シリーズ)が引き続き好評で、今回の孫オーナーの胴上げシーンはソフトバンクの更なるイメージアップに繋がったと思います。
それに引き換え、球界の盟主を標榜するジャイアンツのあの体たらくは一体何なのでしょう。
プロ野球の1年の総決算とも言うべき日本シリーズの始まる前に、清武前代表が球団内部の人事抗争をさらけだすような形で記者会見を行ったことが戦いの火ぶたとなって、その後も「ああ言えば、こう言う」パターンで清武前代表と渡邊会長とが互いを罵り合い、挙句の果てに双方が法廷闘争を宣言し合う始末です(マスコミネタとしては面白いネタだと思います)。
ソフトバンクが日本一になった瞬間に、これが人生最大の喜びであるかのように、マウンドに走り寄って選手から胴上げをされ、顔くしゃくしゃにして宙に舞っていた孫オーナーの清々しい姿に比べ、ジャイアンツは老醜の極みにような渡邊会長の傲岸不遜な態度と、人事抗争を公表した際に泣きながら貴社会見をした清武前球団代表の軟弱振りが、鮮やかなコントラストを描いていたような気がします。
若干法律の話になりますが、ちょっとだけお付き合い下さい。
渡邊会長と清武前代表との法廷闘争は、渡邊会長が圧倒的に有利です。
渡邊会長のこれまでのやり方は、道義的、常識的な見方からすると、やや疑問符が付くものもあり、私は渡邊会長は政治記者としては大変優秀だったと思いますが、ジャイアンツのトップに君臨するようになってからは、晩節を汚すような振る舞いばかりが目立つように思われます。
しかし、清武前代表が、渡邊会長のことを、オリンパスの損失隠しに関与した最高幹部や、カジノで100億円以上費消した大王製紙の前会長と同じレベルで捉えて語るのは極めて問題だと思います。
私はその1点だけで、清武前代表の資質には疑問符が付くと思います。
オリンパスの最高幹部や大王製紙の前会長のやったことは明白な犯罪行為です(現に大王製紙の前会長は特別背任という罪で逮捕されました)が、渡邊会長の振るまいや今回批判されていることは、道義的にはともかく、犯罪ではありません。
それゆえ、オリンパスの解任された英国人の元社長が最高幹部を糾弾する会見をすることは社会的な意味が大いにありますが、球団内部の人事抗争を殊更に公表して渡邊会長を糾弾する清武前代表のやり方に対し、支持が全くと言ってよいくらい集まらないのは、ある意味で当然のように思います。
また日本シリーズの話にちょっと戻ります。
今回惜しくもソフトバンクに敗れた中日の落合前監督は、ペナントレース最終盤に、優勝し続けても観客動員数が伸びないという、訳のわからない理由で今期限りでの解任を一方的に通告されたにもかかわらず、その後驚異的な勝率でヤクルトを捕えてセリーグのペナントレースを制し、圧倒的不利が予想された日本シリーズでも戦前の予想を覆して、日本一まであと一歩のところまで詰め寄りました。
その間、一言も球団に対する不満を公には言わず、黙々とセリーグの優勝と日本一を目指して寡黙に邁進し続けた落合監督の男の美学も光っていました。
以上、今年のプロ野球は終盤に大きなドラマがあって、大いに盛り上がったのですが、同時に、球界の盟主を標榜するジャイアンツが、その盛り上がりに水をかけるような振る舞いをして、球界の盟主の醜態をさらけ出したシーズンだったと思います。
投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士) | 記事URL