田瀬法律事務所の日記

2014年7月28日 月曜日

心にナイフをしのばせて(その2)

前回は、長崎県で発生した高校の女子生徒が同級生の女子生徒を殺害して遺体を切断するという猟奇的な犯罪報道から、44年前に高校の男子生徒が同じような犯罪を犯し、加害生徒がその後弁護士となっていたことが明らかとなったことをお伝えしました。
そして、その弁護士に一部メディアが接近したことから、彼は弁護士を廃業したことを伝え、過去におぞましい犯罪に手を染めた者が弁護士になることの是非について論及するという形で終わりました。
司法試験に合格するかどうかは、過去の事実は無関係ですので、仮に過去におぞましい犯罪に手を染めていた者を排除するかどうかは、合格後に実務家としての登用をする司法修習生時代に決せられます。
そうすると司法修習生の身分を管理するのは最高裁判所であり、当然最高裁判所(事務局)は、司法修習生の犯歴も把握していると思います。
話は脱線しますが、当方も学生時代にスピード違反で罰金を払った過去があり、当時の最高裁はそのことを把握していたと思います。
例のおぞましい犯罪を犯した弁護士の過去は、彼が司法修習生時代に最高裁は把握しつつ、敢えて排除しなかった可能性が高いと思います。
例の弁護士の過去が明らかとなって一部メディアが騒いだ頃、同じ弁護士会で親しくお付き合いをさせて頂いている先輩の弁護士とその件で飲みながら話をしたところ、司法研修所の教官の経歴がある先輩弁護士は次のように語っておりました。

1 もし、仮に過去のおぞましい犯歴を理由に、司法修習生として登用しないと最高裁が判断すると、 最高裁(国)はその司法修習生から職業選択の自由を侵害されたとして国家賠償を提起される可能性が高い

2 仮にそうなった場合、そのことが報道され、最高裁がある意味で批判の矢面に立つことになるが、最高裁はそのようなことは絶対に避けるはずである

3 そうすると、そのような面倒な場面に遭遇することを避ける意味で、おぞましい過去を知りつつ実務家として登用し、面倒な場面への遭遇を避けるはずである

要は、最高裁は面倒なことに巻き込まれるのが嫌で「臭いものに蓋」的な発想で、例えおぞましい過去を持つ者でも司法試験に合格さえしておれば、その後はその事実を知りつつも実務家として登用するらしいというのです。
当方は、その場合、最高裁は実務家として登用することを拒否すべきで、仮に国家賠償訴訟を起こされてても、堂々と闘うべきだと思います。
普通の一般人が法曹(裁判官、検察官、弁護士)に国を震撼させるおぞましい過去があったことを知った場合、司法に対する信頼がそのままであるはずがありません。
罪を償いをした場合は全て許されるということは、一つの原則ですが、どのような原則にも例外があるとおり、罪を償う場合にも例があると思います。
例の弁護士がおそらく罪を償うつもりで一生懸命に勉強し、司法試験に合格して弁護士として活動することでさらに罪の償いをしようとしたのかもしれません。
しかし、厳しい言い方ですが、償う方向性が間違っていたと当方は思います。
もっと別の方法での償い方があったはずだと思います。
償い方を間違えたことで、家族を含む回りの人物にどれだけ辛い気持ちを味わわせたのかを、その元弁護士は知らなくてはいけません。
今はおそらく名前、職業を変え、この国のどこかでひっそりと生活していると思いますが、償いはまだ終わっておらず、一生続くことを肝に銘じるべきです。

投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士)

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