田瀬法律事務所の日記

2012年4月10日 火曜日

2児を放置死させた母親に厳刑が下る

皆様もご記憶だと思いますが、2年前の夏、マンションの自室に3歳と1歳の幼児を放置して死なせたとして殺人罪に問われた元風俗嬢の24歳の女性の裁判員裁判で、大阪地方裁判所は殺人罪の成立を認めたうえで懲役30年(求刑:無期懲役)という極めて厳しい判決を言い渡しました。
この事件は、当時非常に話題になりました。
2人の幼子をマンションに放置し,自分は男友達などと連日遊びまくって家に帰らず、子供達は冷蔵庫のあらゆる食べ物を食べ尽くし、最終的には自分の糞尿まで口にしたことが解剖医の所見から明らかになったという報道には戦慄を覚えました。
そして、マンションの廊下、ベランダ越しに「ママー、ママー」と母親を呼んで泣き叫ぶ幼児の声が連日こだましたため、異変を感じ取った住民から通報を受けた児童相談所係官や警察官が臨場したものの、ドアを壊して室内に入ることができないまま帰らざるを得ず、結果的に救えたはずの幼い命を失わせてしまい、非常に後味の悪い事件だったという印象が残っております。
確かに、この母親には母性の一欠片も感じられず、母親に見捨てられた果てに、餓えと暑さの中で苦悶して死んでいった幼子のことを考えると、この母親には残りの生涯は全て贖罪に捧げさせる必要があると思います。
ただし、当時の報道では、この女性は子供を持った当初、ブログなどに母親になった喜びを書き綴るなど、懸命に子育てをしようとしていた様子を伝えていました。
しかし、離婚して生活のために風俗店に勤めるようになってからは生活が荒み始め、男友達などと連日遊び歩いて家にも帰らないようになり、その結果、取り返しのつかない最悪の事態を引き起こしてしまいました。
その女性にも親はおいたはずで、娘に十分な関心をもっていたなら、このような事態は避けられていたはずです。
また、最近はかつての有名女性タレントが孤独死するなど、誰にも看取られることなく死を迎えざるを得ない孤独死が社会問題化しています。
少なくともマンションから幼子が、母親を求めて連日連夜泣き叫ぶ声が聞こえるようなら、警察官や児童相談所の係官に、ベランダやドアを壊してマンションに入ることについて立法で整備すべきだと思います。
こういう動きには常に「それはプライバシーの侵害に繋がるので慎重に・・・」との反対論が巻き起こります。
しかし、幼子の危殆に瀕した生命と抽象的なプライバシー権はどちらを保護すべきか、中学生でも判ることなのではないでしょうか。
そう言った意味で、今回、2人の幼子の放置死の責任は地域社会全体で受け止める必要があるように思います。
そうすると、責任を母親のみに押しつける形で下された懲役30年という刑は、あまりにも母親のみに責任を押しつけるようで片手落ちの処分で、明らかに重過ぎると思います。
当方の個人的な意見としては、宣告刑の半分である懲役15年(但し、一生十字架を背負ったつもりで贖罪の生活をしなくてはなりません)くらいが妥当ではないかと思います。

投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士)

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