田瀬法律事務所の日記
2011年12月21日 水曜日
刑事事件の報道、ドラマの刑事法廷の現実との違い
新聞で、刑事事件を犯して裁判にかけられることを「起訴される」と言います。
そうすると、それまで○○容疑者と呼ばれていた犯人は○○被告という呼び名に変わります。
これは新聞、雑誌、テレビの3者で皆同じ扱いです。
でも、これは正しい呼び方ではありません。
特に○○被告というのは法的にも間違った呼び方なのです。
起訴されるまでの○○容疑者という呼び方は、正確に言うと、○○被疑者と呼ぶべきなのです。
ただし、被疑者という呼び方は、警察、検察関係者、弁護士以外はあまり使いません。
それゆえ、○○容疑者も誤った呼び方とまでは言えないと思います。
しかし、起訴されてからの○○被告という呼び方は完全に誤った呼び方です。
正確には○○被告人と呼ぶべきなのです。
○○被告という呼び方は、民事訴訟で訴訟を提起された側、つまり訴えられた側の者を指す民事訴訟特有の呼び方で、刑事事件で起訴された被疑者は、起訴を境に、○○被告人と呼ばれるべきなのです。
2時間ドラマなどで刑事法廷が舞台になる場合、裁判が始まる(終わる)時に裁判長が被告人に対し「被告は前に出なさい」と促すシーンを時折目にしますが、正式には「被告人は前に出なさい」と言うべきなのです(ただ最近の法廷シーンでは「被告人は・・・」という台詞を使用している場面も時々目にします)。 本物の刑事法廷で「被告は前に出なさい」と促す裁判官(裁判長)は絶対いないと思います。 それと、刑事法廷が舞台になるシーンで、裁判官席に3人の裁判官が座る場面が映る時があります。 映画、テレビではほぼ50代から60代と思しき男性が、絵に描いたように3人並んでいます。 そこには、女性の裁判官はまずいません。 また、20代や30代と思しき裁判官もまず出てきません。 裁判官が3人の法廷を合議法廷と言い、中央は裁判長、傍聴席に向かって右に座る裁判官は右陪席裁判官、左に座る裁判官が左陪席裁判官と呼ばれます。 この3人の裁判官裁判には、裁判長-右陪席裁判官-左陪席裁判官という絶対的な序列があります。 裁判所の中で一番よく使われる「地方裁判所」の場合、裁判長は概ね40代から50代前半で、右陪席が30代から40代前半、左陪席が20代半ばから30代前半です。 また最近は女性裁判官の数が増え、3人中2人が女性ということも珍しくありません。 さらに全員女性というケースもあります(私も民事訴訟ですが一度だけそのような組み合わせの裁判官に当たったことがあります)。 司法試験に合格するには短期間で合格する人がいる一方で、苦労して合格する人もおり、短期間で司法試験に合格した人は40歳くらいで裁判長になるケースもありますが、苦労して合格した人は50歳くらいで裁判長になるケースもあります。 しかし、60歳の地方裁判所の裁判長は殆どいないと思いますし、いわんや50代、60代の左陪席裁判官など絶対にあり得ません。 物理的には司法試験に25回目の挑戦で合格すると50代の左陪席裁判官もあり得ますが、裁判官に採用してもらうためには、最大限5回前後で司法試をパスしなくてはならず、25回もかかった人は絶対に裁判官に採用してもらえないのです。 私が司法試験に合格した頃から女性合格者の数が急に増え始め、現在司法試験の合格者中の女性比率は20%台後半と言われています。 そうすると、今後は、3人の裁判官全員が女性ということも珍しくないのかもしれませんね。 ちなみに、私は弁護士になって3年目くらいに我が国の3大新聞の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3社に、刑事事件の被告人を○○被告というのはおかしいのではないかという指摘をした投稿をしました(弁護士としての身分と氏名を明らかにした上での投稿です)。 そのうち、朝日と読売から回答が文書で寄せられました。 細かい文面は異なりますが、双方は同じ趣旨の内容でした。 要は○○被告人という呼び方が正しく、○○被告という呼び方は正しくないことはわかているが、長期間、そのような呼び方で報道がなされており、刑事事件で起訴をされた容疑者は○○被告というように呼ばれるのが、国民の間で広く浸透していて、今更、その呼び方が正しくないと言って○○被告人という呼び方にするのも、却って国民に混乱を引き起こし兼ねないということです。 その上で、○○被告が正しい呼び方だというのは警察、検察、裁判関係者、弁護士がわかってさえいればよいというのです。 私は、その回答を聞いて、あまり説得的な回答だとは思えませんでしたが、みなさんはどう考えますか?
そうすると、それまで○○容疑者と呼ばれていた犯人は○○被告という呼び名に変わります。
これは新聞、雑誌、テレビの3者で皆同じ扱いです。
でも、これは正しい呼び方ではありません。
特に○○被告というのは法的にも間違った呼び方なのです。
起訴されるまでの○○容疑者という呼び方は、正確に言うと、○○被疑者と呼ぶべきなのです。
ただし、被疑者という呼び方は、警察、検察関係者、弁護士以外はあまり使いません。
それゆえ、○○容疑者も誤った呼び方とまでは言えないと思います。
しかし、起訴されてからの○○被告という呼び方は完全に誤った呼び方です。
正確には○○被告人と呼ぶべきなのです。
○○被告という呼び方は、民事訴訟で訴訟を提起された側、つまり訴えられた側の者を指す民事訴訟特有の呼び方で、刑事事件で起訴された被疑者は、起訴を境に、○○被告人と呼ばれるべきなのです。
2時間ドラマなどで刑事法廷が舞台になる場合、裁判が始まる(終わる)時に裁判長が被告人に対し「被告は前に出なさい」と促すシーンを時折目にしますが、正式には「被告人は前に出なさい」と言うべきなのです(ただ最近の法廷シーンでは「被告人は・・・」という台詞を使用している場面も時々目にします)。 本物の刑事法廷で「被告は前に出なさい」と促す裁判官(裁判長)は絶対いないと思います。 それと、刑事法廷が舞台になるシーンで、裁判官席に3人の裁判官が座る場面が映る時があります。 映画、テレビではほぼ50代から60代と思しき男性が、絵に描いたように3人並んでいます。 そこには、女性の裁判官はまずいません。 また、20代や30代と思しき裁判官もまず出てきません。 裁判官が3人の法廷を合議法廷と言い、中央は裁判長、傍聴席に向かって右に座る裁判官は右陪席裁判官、左に座る裁判官が左陪席裁判官と呼ばれます。 この3人の裁判官裁判には、裁判長-右陪席裁判官-左陪席裁判官という絶対的な序列があります。 裁判所の中で一番よく使われる「地方裁判所」の場合、裁判長は概ね40代から50代前半で、右陪席が30代から40代前半、左陪席が20代半ばから30代前半です。 また最近は女性裁判官の数が増え、3人中2人が女性ということも珍しくありません。 さらに全員女性というケースもあります(私も民事訴訟ですが一度だけそのような組み合わせの裁判官に当たったことがあります)。 司法試験に合格するには短期間で合格する人がいる一方で、苦労して合格する人もおり、短期間で司法試験に合格した人は40歳くらいで裁判長になるケースもありますが、苦労して合格した人は50歳くらいで裁判長になるケースもあります。 しかし、60歳の地方裁判所の裁判長は殆どいないと思いますし、いわんや50代、60代の左陪席裁判官など絶対にあり得ません。 物理的には司法試験に25回目の挑戦で合格すると50代の左陪席裁判官もあり得ますが、裁判官に採用してもらうためには、最大限5回前後で司法試をパスしなくてはならず、25回もかかった人は絶対に裁判官に採用してもらえないのです。 私が司法試験に合格した頃から女性合格者の数が急に増え始め、現在司法試験の合格者中の女性比率は20%台後半と言われています。 そうすると、今後は、3人の裁判官全員が女性ということも珍しくないのかもしれませんね。 ちなみに、私は弁護士になって3年目くらいに我が国の3大新聞の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3社に、刑事事件の被告人を○○被告というのはおかしいのではないかという指摘をした投稿をしました(弁護士としての身分と氏名を明らかにした上での投稿です)。 そのうち、朝日と読売から回答が文書で寄せられました。 細かい文面は異なりますが、双方は同じ趣旨の内容でした。 要は○○被告人という呼び方が正しく、○○被告という呼び方は正しくないことはわかているが、長期間、そのような呼び方で報道がなされており、刑事事件で起訴をされた容疑者は○○被告というように呼ばれるのが、国民の間で広く浸透していて、今更、その呼び方が正しくないと言って○○被告人という呼び方にするのも、却って国民に混乱を引き起こし兼ねないということです。 その上で、○○被告が正しい呼び方だというのは警察、検察、裁判関係者、弁護士がわかってさえいればよいというのです。 私は、その回答を聞いて、あまり説得的な回答だとは思えませんでしたが、みなさんはどう考えますか?
投稿者 田瀬英敏法律事務所(恵比寿の弁護士)